干瓢(かんぴょう)と胡瓜の酢のもの


かんぴょう【干瓢/乾瓢】
ユウガオの白い果肉を細長くむき、干した食品。鮨 (すし) ・煮物の具にする。

出典:デジタル大辞泉「干瓢

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干瓢の生産日本一は栃木県、全国の9割を占める。

栃木県で干瓢作りが行われるようになったのは江戸時代中期のことで、近江国水口藩の藩主鳥居忠英が下野国壬生藩に国替えになったことに遡る。




近江国水口藩は現在の滋賀県甲賀市にあたる。

水口は東海道五十三次の50番目の宿場で、安藤広重の絵に干瓢作りの風景が描かれている。


出典:『東海道五十三駅風景続画』安藤広重画


1712年(正徳2年)鳥居忠英が下野国壬生藩に国替えとなった際に、水口から干瓢の種を取り寄せて壬生で栽培を始めたところ、その土地にとても適していたらしい。

参考:『とちぎ県民だより 2012(8月)』 かんぴょう伝来300年


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ユウガオ(夕顔)学名:Lagenaria siceraria var. hispida
ウリ科ユウガオ属の蔓性一年草

夏の夕方に白い花を開き、次の日の朝にはしぼんでしまう「夕顔」の花


出典:『畫本野山草[4]』橘保國畫圖(1800年代)

名前からすると「朝顔」「昼顔」の仲間のように聞こえるがそうではない。

「朝顔」「昼顔」はヒルガオ科の植物であるのに対して、「夕顔」はウリ科の植物。

大きな実のできるヒョウタンやヘチマの仲間だ。


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日本文学に夕顔を探してみれば、やはり『源氏物語』 が最初に浮かぶ。

第4帖「夕顔」

<光源氏と夕顔との出会い>


出典:『源氏物語五十四帖 夕顔』広重(嘉永5)



<扇に夕顔の花をのせて光源氏に>



 心あてにそれかとぞ見る白露の
    ひかりそへたる夕顔の花  (夕顔)

 寄りてこそそれかとも見めたそがれに
    ほのぼの見つる花の夕顔  (源氏)


どこか儚げで優しく可憐な夕顔は、光源氏との逢瀬の夜に魔性に憑りつかれて亡くなってしまう。


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紫式部が描いた夕顔のイメージとは対照的に、清少納言は『枕草子』のなかで次のように言っている。

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夕顔の朝顔に似て、言ひつゞたるも、をかしかりぬべき花の姿にて、にくき実のありさまこそ、いとくちをしけれ

などてさはた生ひ出でけん、ぬかつきなどいふものゝやうにだにあれかし

されどなほ、夕顔といふ名ばかりはをかし。
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参考:『趣味の園芸』金井紫雲(大正6) 『枕草子春曙抄 上』北村季吟(昭和22)


「ぬかつ(づ)き」は「ほおずき」のこと。

夕顔の花は朝顔に似ていて、朝顔・夕顔と言い続けても感じがいいのだけど、実の形はおしいわね。せめてほおずきの実のようだったらいいのに…


清少納言にそうは言われても… 夕顔はヒョウタンやヘチマの仲間だから大きな実がなるのは自然の摂理。


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さて、干瓢の下処理から☆彡



水でさっと洗ってから塩でもむ


こうすることで柔らかく仕上がるらしい。



鍋にお湯を沸かして干瓢を茹でて


好みの柔らかさになったらざるにあげる。



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今日は胡瓜と合わせて酢のものに☆彡

くにょっとした干瓢の優しい食感ときゅうりのしゃきしゃき感がいい。


日本の食卓に うましかて!


豆ご飯と高野豆腐の卵とじ


今日は豆ご飯と高野豆腐の卵とじ☆彡

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知人から家庭菜園のえんどう豆が届いた。



毎年この時期になると送ってくれるので、豆ご飯とお惣菜をいくつか作ったら残りは冷凍保存にするのが恒例になっている。


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包みの新聞に「緊急事態の日常」とあって、去年とは違うことにあらためて気づかされる。



子どもの頃、季節性インフルエンザのことを「流感」と呼んでいた。「流行性感冒」の略、インフルエンザ(influenza, flu)のことだ。

私たちはA型インフル、B型インフル、鳥インフルなどと呼んでいるが、昔のひとはどのように呼んでいたのだろう?

浄瑠璃や歌など、その時に流行ったもののを名前をつけて呼んでいたようだ。


📖


例えば、宝永8年(1711年)に流行ったインフルエンザは「お染風邪」と呼ばれた。



油屋の娘おそめと奉公人の丁稚久松の心中を描いた浄瑠璃「お染久松」にちなんだ名前で、前年の宝永7年(1710年)正月6日に実際に起きた心中事件がモチーフになっている。


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安永5年(1776年)の流行は「お駒感冒」と呼ばれた。


出典:『新撰東錦絵 白木屋お駒の話』(明治19年)

材木商白子屋の娘お熊の実話を題材にした浄瑠璃「恋娘昔八丈」にちなんでいる。(初演は安永4年)


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享和2年(1802)のときは「お七感冒」と呼ばれた。


出典:『古今名婦伝 八百屋お七』(慶応2年)

井原西鶴の浮世草子『好色五人女』に描かれたことで有名な八百屋お七だ。

お染、お駒、お七、三人に共通しているのは話の結末で亡くなる点、お染は心中、お駒とお七は死罪となっている。


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力士の名前がついたインフルエンザもある。


出典:『お伽文庫1 - 谷風梶之助-』(大正1年)

天明4年(1784年)の流行性感冒は力士の谷風梶之助にちなんで「谷風」と呼ばれた。


大相撲史上でも指折りの強豪とされる谷風は、普段から「どんな人間でもおれを土俵の上で倒すことは出来ぬから、おれの倒れた所を見ようたって見られはせぬ。もし見たいならば、おれが風邪をひいた時に来い」と言っていた。


そんな谷風が真っ先にこの年のインフルエンザにかかったのだから、誰いうとなく「谷風」と呼ぶようになった。

参考:『たましひ』(大正8年)『蜀山人頓智笑談』(明44年)


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余談ついでにもうひとつ。

大正時代の本に、熱が出たときの対処療法として豆腐と小麦粉で作った湿布を胸やおでこに貼るとある。

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熱度が高かったらば、右の服薬以外に豆腐を能く水を切り、少量の麦粉を交ぜて紙か布かに引きのばして、それを胸部に張るのです。内外相待ちて、一層早く熱が退いて行きます。

 (略)

頭痛がした時は林檎の汁か、水を切った豆腐かに、少量の麦粉を混ぜて、紙又は布に引きのばして額に貼ります。屹度(きっと)漸次に快復して行きます。
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出典:『実験食療法』(大正5年)


今なら冷えピタだ。

身近なものであれこれ工夫をして、家族の健康を願う気持ちはいつの時代も変わらないのだなあ。

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さて、えんどう豆でお昼ご飯☆彡


まずは豆ご飯


お惣菜は高野豆腐と卵とじ☆彡


小さめに切った高野豆腐と


えんどう豆をだしで煮て


卵でとじたら出来上がり☆彡


日本の食卓に うましかて!


晩白柚の皮の砂糖漬け


前回のBlogも見てね
→ 晩白柚(ばんぺいゆ)と大根のサラダ

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今日は晩白柚の皮の砂糖漬けを作ろうと思う。


大正時代の料理の本にも文旦の砂糖漬けがある。

レシピは現在とほぼ同じだが、下茹でする際には糠(ぬか)とミョウバンを使っている。糠は苦味をとるため、ミョウバンは形を保つためと説明がある。

以下に紹介してみよう。


出典:『漬物煮物法 家庭応用』(大正10)

●文旦漬法

1. 西瓜を切るように四つ切に切り、皮の尻頭を少し切り去り、外側も薄く取り、内側も薄く包丁で取りまして、水に浸けておきますこと二時間以上で、一二度水を取り替えます。

2. 取り替えますごとに、両手ではさみ搾りて水に浸けるのであります。

3. 今度は水一升に糠二合半入れて、釜のなかで十五分間ほど炊きます。普通の火力で差し支えありません。

4. そして、また水に二時間ほど浸けておくこと前の通りであります。

5. そして、今度は水一升に枯礬五匁以上を入れて十五分間ほど炊きます。

 ※枯礬は焼きミョウバンのこと

6. そして、水に浸すこと前の通りであります。
仕事の都合にて明日までも水に浸けておくは差支えありません。その代り水は時々替えてやります。取り替えるごとに両手で押し絞ります。



出典:『本草図譜62』岩崎灌園

7. 搾りしもの百匁につき砂糖六七十匁水一合以上であります。鉄鍋に砂糖を溶いてから材料を入れ、普通の火力で炊くのでありますが、時々箸で裏表にかえし、表の時には箸で押さえて平たく成すことにします。

そして、煮汁がほとんど無くなる時分が大事で手放しや油断ができません。あちらに遣りこちらに返して扱うのであります。

8. そして、汁が無くなったならば板の上に白砂糖を用意しておいて、裏表ともに振りかけましたのが文旦漬けであります。


出典:『漬物煮物法 家庭応用』(大正10)



炊くときの砂糖の分量は「搾りしもの百匁につき砂糖六七十匁水一合以上」とあるから、下処理して水気を絞った文旦375gにつき砂糖225~262.5g、水80cc。

分かり易い数字に換算すると、文旦100gにつき砂糖60~70g、水は20ccだ。最後に砂糖をまぶす。


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さて、晩白柚の砂糖漬け作り☆彡

まずは晩白柚の皮を大きな拍子切りにする。


黄色い外皮を剥いて、鍋に入れて


熱湯を注いで5分蒸らす。


《鍋が小さすぎた...》


水にとって洗って


水気を絞って


同様の工程を繰り返す。


2回目


3回目


しっかり水気をきって


水と砂糖を沸騰させた中に入れて


時々かき混ぜながら


しっかり水分を飛ばす。


お皿に広げて粗熱がとれたら


グラニュー糖をまぶす。


初めて作るのでこれでいいのか悪いのか…


もう少し水分をしっかりと取ったほうがいいように思うのでオーブンで乾燥することに。


160℃ので30分、冷めてからもう一度140℃で30分。


最後にグラニュー糖をまぶしたら出来上がり☆彡


日本の食卓に うましかて!

晩白柚の風味と優しい甘さについ手が伸びる。


葉つき大根(2)葉っぱのお惣菜



《実家から届いた抜きたての大根》

お正月には持って帰らずに(今シーズンは遅くに作付けしたから生育が十分ではないということで)、食べ頃を送ってもらった。

父の収穫した大根が翌日に届く。ひとえに宅配便サービスのおかげだ。


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さっそく調理☆彡(1月15日)



先の部分は大根おろしに(辛みが美味しい)


次の部分は皮付きのままぬか漬けに



葉っぱの半分は浅漬けに☆彡


茹でて水にとり、しっかり水気を絞って


小口切りにして


市販の浅漬けの素に漬ける。


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葉っぱの半分は、ちりめんじゃこと炒めて


ほんの少し塩を加えて


最後にごまを加えて出来上がり☆彡

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大根が届いたその日の夜


大根おろし、葉っぱとちりめんじゃこの炒めもの。

葉っぱの中央の若い部分は茹でたてをそのまま、甘くて美味しかった。

やはり、野菜は旬と採れたてが一番だ。


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大根の葉っぱとちりめんじゃこの炒めもの



大根の葉っぱの浅漬け


日本の食卓に うましかて!


本を出版しました!



いつもお立ち寄りくださりありがとうございます。
おかげさまで、当ブログを始めてもうすぐ満5年を迎えます。

これを機に電子書籍を出版いたしました。


内容は全編書き下ろしとなっています。また、ブログ未掲載のお料理もいくつかありますので、是非お手にとってみて頂けましたら幸いです。






明治・大正生まれの日本人の文筆家を中心に、作家・詩人・料理家・実業家など、食にまつわる様々な方たちのエピソードを季節の料理に添えました。

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*目次*

1月 お煮しめ
   鱈のムニエル・レモンバターソース
   鶏そぼろと湯葉の茶碗蒸し
   うさぎのトマト煮込み
2月 たぬき汁
   釜めし風 牛肉の炊き込みご飯
   帆立のフライ
   飯蛸とわけぎの辛子酢みそ
3月 野蒜のぬた
   おからの炊いたん
   天ぷら茶漬け
   ビーフバーガー
4月 トーストの朝食
   わらびの酢のもの
   葉ごぼうのめはりずし風
   スパゲッティ・ナポリタン
5月 ホワイトアスパラガスのごま和え
   筍ご飯
   肉じゃが
   ぬか漬け
6月 はたはたの干もの
   昆布と実山椒の佃煮
   ひらめの昆布じめ
   焼きさば寿司
7月 栄螺のつぼ煮
   柿の葉ずし
   茄子の南蛮漬け
   冬瓜の小海老あんかけ
8月 カレーライス
   グリーンサラダ
   かつ丼
   すき焼き
9月 すだちとクレソンと焼き塩さばのサラダ
   まながつおの幽庵焼き
   長芋の酢のもの
   秋刀魚の塩焼き
10月 煎り雲丹の混ぜご飯
   松茸の土瓶蒸し
   いくらの醤油漬け
   栗の渋皮煮
11月 干し柿のなます
   かぼすと鯖フレークのスパゲッティ
   生牡蠣
   里芋と干し椎茸の煮もの
12月 鴨鍋
   せこ蟹ご飯
   菊花かぶ
   新橋の立ち食いそば風 温かい湯葉そば



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→ 『好奇心がいっぱい 季節の料理散歩



どうぞよろしくお願いいたします。💐


里芋ご飯


サトイモ(里芋)学名:Colocasia esculenta
オモダカ目サトイモ科の植物

地下茎(塊茎)と葉柄を食用にする。葉柄はズイキ(芋茎)と呼ばれる。

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日本での栽培の歴史は米より古く、品種も多い。(土垂、石川早生、たけのこいも、えび芋(唐の芋)、八つ頭、セレベス、赤芽大吉、大和、烏播、伝燈寺里芋、など)


この里芋の品種は何だろう。

ネットで調べてみると、「大和(やまと)里芋」、もしくは、金沢の伝統野菜の「伝燈寺(でんどうじ)里芋」のように思われる。



皮を剥くと、色白で肉質は密でなめらか。

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まずは、お米のとぎ汁で下茹でする。


下茹でについては過去Blogを見てね 👀
→ えび芋と干椎茸と銀杏の煮物
   ぬかゆがきとあく抜き


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ご飯を炊くためのだしをとる。

前の晩から昆布と煮干しを水につけておく(A)


(写真はコンロの上だが、火にはかけていない)


だしに使った昆布を細切りにして



洗った米に里芋と昆布を加えて、
(A)のだし、醤油、日本酒、塩少々でご飯を炊く。


炊きあがりはつやつや


ふっくらと混ぜ合わせたら出来上がり☆彡

やさしい秋の味🍂


日本の食卓に うましかて!


オクラと長芋のとろろ


オクラ(英語:okra) 学名:Abelmoschus esculentus
アオイ科トロロアオイ属の多年草

原産地はアフリカ北東部、日本では冬越しが難しく一年草として扱われる。



和名を「アメリカねり(亜米利加黄蜀葵)」という。

その名の通りアメリカの「ねり」という意味だが、元々の「ねり(黄蜀葵)」は中国原産のトロロアオイ属の一年草で根からとれる粘液を紙漉き和紙の添加剤として利用してきた。

その近縁種が明治時代にアメリカからやって来た。ゆえに「アメリカねり」。



<切り口が星形の「五角種」オクラ>




オクラの表面には細かなうぶ毛(毛状突起)がはえている。



この毛はアブラムシなどから身を守るための虫よけ対策だ。

植物を食べようとする虫の足の長さより毛状突起のほうが長いと虫は歩きにくい、だからよそへ行く、という理屈のようだ。

参考:日本植物生理学会「おくらの茎と毛



ということは、オクラの天敵にとってこの毛の感じが歩きにくいのだろうなあ。



タネはどことなく青パパイヤのタネに似ている。



青パパイヤが気になったら過去Blogを見てね 👀
 → 青パパイヤのぬか漬け




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オクラに塩をふって板ずりし、うぶ毛をとり除いて



茹でて



刻んで



彩りに茹でた菊の花を加えてみる。



だしを加えた長芋のすりおろしに合わせて出来上がり☆彡


日本の食卓に うましかて!




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