
おから【御殻/雪花菜】
《女房詞から。豆腐を作るときの豆乳をしぼったあとの「から(殻)」の意》 大豆 (だいず) のしぼりかす。食用、また飼料にする。豆腐殻。きらず。うのはな。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「おから」
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おからといえば昔なつかしい日本のお惣菜のひとつ。

おからは「から(殻)」に「お」をつけた女房詞で、その白さからウツギの花に喩えて「卯の花」とも呼ばれる。
別名「きらず」というのは、包丁で切らずにそのまま調理できることから付いた名前である。
「雪花菜」という字があてられるのがなんとも清々しく綺麗だ。
参考:『日本家事調理法』(明治37年)
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「おから」を好んだ文人に内田百閒氏がいる。

「おからでシャンムパン」というエッセイがあるので紹介しよう。
次のような冒頭で始まる。
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お膳の上に、小鉢に盛つたおからとシャムパンが出てゐる。
シャンムパンはもう栓が抜いてある。抜く時は例のピストルのような音がして、抜けた途端にキルクの胴がふくれるから、もう一度壜の口へ差し込む事は出来ない。だからあらかじめ代りの栓を用意して、杯と杯の間はその栓で気が抜けない様にする。さう一どきに、立て続けに飲んでしまふわけには行かない。
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普段はおからに酢をかけて食べる百閒氏だが、シャンパンを飲むときだけは贅沢にレモンを絞った。
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小皿のおからの山の上から、レモンを搾つてその汁を沁ませる。おからは安いが、レモンは高い。この節は一つ九十円もする。尤も一どきに一顆まるごと搾つてしまふわけではない。
酢をかける所をレモンで贅沢する。
それでおからの味は調つてゐるが、醤油は初めから全く用ゐない。だからおからの色は真白で、見た目がすがすがしく、美しい。
(略)

お膳の上のおからに戻り、箸の先で山を崩して口に運ぶ。山は固く押さへてあるから、箸の先に纏まった儘で、ぼろぼろこぼれたりはしない。
又レモンの汁が沁みてゐるので、おからの口ざはりもぱさぱさではないが、その後をシャムパンが追つ掛けて喉へ流れる具合は大変よろしい。
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『御馳走帖』 内田百閒
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ごくごく薄く味つけをしたおからにレモンを絞るとは、なかなか粋な食べ方である。
現代にあてはめればさながらヴィーガン料理だ。

今日は人参・干し椎茸・グリーンピースと合わせて炊いてみた☆彡

日本の食卓に うましかて!