
たいめし【鯛飯】
1 鯛のそぼろをのせた飯。
2 飯を炊く途中で鯛の身をのせ、醤油味で炊き上げる飯。
3 鯛の刺身をごま醤油に浸し、熱い飯にのせて食べるもの。
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ひとくちに「鯛めし」といっても、鯛をそぼろにして混ぜ込んだもの、汁をかけたもの、ごまダレで和えたお刺身をのせたもの… 地域によって様々な食べ方がある。
古い本からレシピを拾ってみると…

出典:『最新和洋料理法 附・家庭菓子の製法』
鯛の料理 (明治41)
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鯛めし(明治41)
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鯛めしの拵へ方(明治41)…うしお汁を添える
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鯛飯(大正7)
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鯛の胡麻汁飯(大正7)
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鯛の汁掛け飯(大正7) … 汁かけ飯
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浜焼飯(大正7) … 汁かけ飯
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鯛飯の炊きやう(大正8)… 汁かけ飯
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鯛飯の炊き方(大正9) … 汁かけ飯
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鯛飯(昭和2) … 汁かけ飯
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鯛御飯(昭和3)
汁かけタイプが多いのは、冷や飯を美味しく食べる工夫だろうか。
当時の炊飯は薪を燃料にお釜で炊くのだから大変な家事労働で、毎食炊き立てのご飯を食べるのは難しかった。
必ず日に一度は冷や飯となれば、温かい汁をかけるレシピが多いのもうなづける。
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話はそれるが、前述の「鯛めしの炊きやう」を掲載している『家庭経済米の調理法百種』に台所の様子が描かれていて、これがなかなか面白い。

大正8年(1919年)頃の都市型キッチン。
板敷きの間にスマートなかまどが置いてある。
その横には七厘と鉄瓶。
床の一部はおそらく上板(あげいた)になっていて床下収納ができるのだろう。
置きかまどの左は一段下がり、土間のうえに簀の子がひいてあって、ここには立ったまま使える流し台に水道の蛇口が備え付けられている。

流しには洗い桶、ささらのたわし、しゃもじ、包丁とまな板のセットなどが整然と並び、シンプルかつスタイリッシュ。
最先端のシステムキッチンだ。
さらに注目は女性の履き物がスリッパであること。

つま先に水よけがついた草履のようにも見えるが

脱ぎ揃えた図をみるとやはりスリッパのように見える。
この本には「節米の仕方」とサブタイトルが付いていて、次のような序文が添えられている。
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簡易生活とか、経済本位とかいふ言葉は、今や一種の流行語として用ゐられるやうになって、何れも「質素生活」を意味する訳であるが、これは往々言ふべくして行はれ難いもので、ややもすれば、華奢贅沢に流れ易く、殊に近頃の如く、虚栄の盛んな時代に於ては尚更の事である。
(略)
読者諸君は、宜しく本書を応用し、一椀の粗飯に舌鼓して、家庭経済上の一助ともならば、余の本懐とする所である。
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「節米」「質素生活」というと随分古めかしく聞こえるが、「節約レシピ」と「シンプルな暮らし」と読み替えれば今も昔も人びとの感覚は変わらないなあと思う。
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今日は焼いた鯛を昆布だしで炊いた鯛めし☆彡

塩をして一晩冷蔵庫で寝かせた鯛の骨付き半身を

魚焼きグリルで焼く。
焦げやすい尻尾をアルミホイルでくるんで

芳ばしい香りが立つようしっかりと焼き目をつける。

お米2カップに、一晩水につけておいた昆布だし2カップ、醬油大さじ1、日本酒大さじ1、塩少々。

強めの中火で沸騰したら弱火にして10分。
最後に30秒強火にしてから火を止めて10分蒸らして出来上がり☆彡

日本の食卓に うましかて!