えごまと焼肉


エゴマ(荏胡麻) 学名:Perilla frutescens
シソ科の一年草、東南アジア原産

エゴマはシソやバジルと同じ仲間、シソ科の植物だ。ゴマ科のいわゆるゴマ(胡麻)とは種類が異なる。

古名を「荏(え)」という。

最近でこそ生葉を食用とするが、長く油(食用ではない)を採る目的で栽培されてきた。



平安時代中期に編纂された『延喜式』の巻17「内匠寮」には、漆供御雑器に関し「漆一升二合」に「荏(エノ)油四合」を混ぜて用いたと記されている。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション「延喜式. 第4


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戦前の書物を調べてみると、栽培作物として胡麻と荏がだいたい並んで記載されていて、大正時代の『有利なる農家の副業』という本では、植物油として菜種油、胡麻油、落花生油に続いて荏油が記載されている。

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これよりとる油は食用にも燈火用にもなるが、乾性油である故に特に雨具、傘、油紙などに塗るに適します。
気候も土質も大なる好き嫌ひがない、通常五月頃に麥(むぎ)畑の間作などにする、一段歩よりは一石位とれる、全國の産額は六七萬石で、栃木地方の産が多い、種子の含油料は四割より五割位です。
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出典:国立国会図書館デジタルコレクション「新編栽培各論教科書」「有利なる農家の副業





一部の資料には種子を炒って香味料に充てられるという記述もあるが、基本的にはエゴマを食用とすることはなく、種子から採った油を雨傘や雨具の塗料に利用していた。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション「乾物類之栞業




(左:エゴマ、右:青じそ)

エゴマと青じそは形が非常によく似ている。(エゴマのほうが二回りから三回りほど大きい)

形は似ているが、香りはまったく違う。エゴマの独特の香りは人によって好き嫌いがはっきり分かれるところだ。

どんな香りか?といっても他に似たものがないから、表現するのが難しい・・ 例えば、ヒノキやマツタケが独特の香りであるようにエゴマもエゴマにしかない独特の香りなのである。


戦前に食用とされてこなかった理由のひとつは、この香りが日本人の好みに合わなかったからだろう。




エゴマの香りは「ペリラケトン(Perilla ketone)」と「エゴマケトン(Egomaketone)」という成分に由来する。

私も初めて食べたときは一瞬戸惑ったが、癖がある食べ物というのは慣れると好きになるもので、焼肉を食べる時にはたまに食べたくなる。


※ ちなみにシソの香りは「ペリルアルデヒド(perillaldehyde)」という成分で、シソ精油の約50%を占める。




今日は市販の味つけハラミ焼肉とエゴマ☆彡

焼肉が日本の家庭料理として定着した背景はエバラの焼肉のたれの貢献が大きい。

最初に「焼肉のたれ」が発売されたのは1968年(昭和43年)、その10年後に「黄金の味」が発売された。

エバラ食品の沿革をみると「黄金の味」は関西をターゲットにした商品開発であったようで、確かに子どもの頃の記憶は「黄金の味」以降である。


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最後に文人と焼肉のエピソードをひとつ紹介しよう。

若山牧水と石川啄木。焼肉とはあまりイメージの重ならい二人だが…

石川啄木の最期を看取った若山牧水がその年の9月に出版した『死か芸術か』(1912年)のなかで、啄木の死に哀悼を寄せるとともに啄木調の歌をよんでいる。


四月十三日午前九時、石川啄木君死す。

かなしき岬

停車場のあまき煤煙(けむり)のまひ来(きた)る
   レストラントの窓の焼肉


若山牧水の手にかかれば、焼肉料理店も石川啄木風の甘く哀しい佇まいになる。

文人暴食』 -若山牧水- 嵐山光三郎


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焼肉のうえに糸唐辛子を添えて☆彡



日本の食卓に うましかて!



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