
シェパーズパイ(英:shepherd's pie)
羊のひき肉とマッシュポテトで作る英国料理
牛肉で作ったものは「コテージパイ(cottage pie)」と呼ばれる。
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今日は「シェパーズパイ」が食べたかったので、ネットで羊のひき肉を購入した。

こないだ買ったうさぎ肉に続けて今回もハラールミート。最近は輸入ミートを購入するとハラールであることが増えたように感じる。
観光地でもハラール対応の料理店を見かけるから以前より随分と身近なものになってきた。
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さて調理開始。
クックパッドの「英国大使館公式キッチン」のレシピを参考に作る☆彡

「英国は料理が美味しくない」とよくいうが、私には取り立ててそんな印象はない。
10年ほど前になるが立て続けにロンドンに出張する機会があったが、朝食の薄切りトーストは美味しいし、紅茶はもちろん、フィッシュアンドチップスも美味しかった。
豪勢にミシュラン星のレストランに行けば世界中どこに行っても一定のクオリティのものが食べられる。
不味いことも含めてその土地の特徴だとすれば、食文化もまたグローバル化(健康志向は大きい)によって均質化されつつあるのだなぁと感じる。

英国料理の擁護派のといえば吉田健一氏がいる。吉田茂元首相の長男で英文学者(1912年~1977年)だ。
「英国人の食べもの」というエッセイの中で、英国は肉・ハム・麦といった素材の質がいいからこそシンプルな食べ方をしているのであり、新鮮な魚を生のまま醤油とわさびにつけて食べる日本人と似ていると言っている。
少し長くなるが引用してみよう。
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英国人の食べものは今日でも、何よりも先づ材料がいい。例へば、ハムが旨いので、英国でハムを食べるとハムといふものの匂ひがする。
朝の気分と同じ新鮮な匂ひがするのであって、生ハムを切って皿に盛ったのを台所から持って来る途中で既に、それがハムであることが解る。
(略)
英国のパンも、麦の匂ひがする。
英国のトオストが旨いのは、パンを扱ふのにトオストを作る以外に能がないからではなくて、パンも本当に旨ければ、これをただ焼いてバタを付けて食べるのが一番そのパンといふ材料に適した食べ方だからなのである。

そして、英国の牛肉も、牛肉の匂ひがする。
一頃は日本でも、牛肉は牛肉の匂ひがしたものだったが、食べものといふのは先づ匂ひで決るものなので、ただ牛肉を焼くだけの料理が英国で発達したのは、それ以外のことをするのは勿体ないやうな上等な牛肉が英国で出来て、それが国内に普及したからである。
つまり、材料がいいので、その意味で英国の焼肉の料理は鮪のとろの刺身を思はせる。
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英国ではロオスト・チキンが御馳走の中に入ってゐる。
我々は一流の西洋料理屋にでも行かない限り、鶏を焼いたのを格別に旨いとも思はないが、それは鶏の品質の違ひから来てゐるのである。
我々が鶏の肉を買へば、それが兎に角柔かなことで満足しなければならないのに対して、英国のは柔かである上に鶏の肉の味も、匂ひもする。
(略)
そして焼く代りにシチュウを作れば、鶏の肉の匂ひがする鶏のシチュウといふ、英国から帰って来れば、さういふものにはあり付けないものが出来る。
或は、ロオスト・チキンに付けて出すじゃが芋の茹でたのでも、これに薄荷の葉が刻んで掛けてある所を夢に見てもいい代物で、万事がその調子である。
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さうして見ると、英国の料理では家庭料理が主になってゐる。
その方式で、もう少し暇を掛けて作ったものを食べさせるのが牛肉を焼いたのや、生牡蠣で有名な一流の料理屋なので、それと英国人の家庭の間に、料理法の上で本質的な相違はない。
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『旨いものはうまい』-英国人の食べもの-吉田健一

また、別のエッセイでは次のようにも言っている。
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英国の料理がまずいと言われるのは、一番上等な附き合いが料理屋ではなくて、家庭で行われるからである。
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『酒に呑まれた頭』-女と社交について- 吉田健一
そう考えてみると、英国の首相官邸(ダウニング街10番地)が家庭的な佇まいであるのも頷けるような気がしてくる。

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英国大使館の「シェパーズパイ」のレシピにそってひき肉を煮込む。
トマトペーストにウスターソース、もちろん「リーペリン(LEA&PERRINS)」を用いる。

シナモンの甘い香りが羊肉の風味によく合う。

煮込んだひき肉をグラタン皿に移して、マッシュしたじゃが芋を乗せて

チェダーチーズと荒く刻んだ白ねぎを散らして

オーブンで焼いたら出来上がり☆彡

白ねぎのアクセントが想像以上に良い仕事 (*'▽')オイシイ

日本の食卓に うましかて!

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ロンドン・テートモダンの思い出